第29話 龍源水
2005年10月10日 00:00
第29話 龍源水(りゅうげんすい) |
さて、まめこぞうの旅はもともと市内小中学生の皆さんに向けて書いているのですが、生徒さんたちから最もリクエストが多いのが座間のわき水です。 それにお答えして今回からわき水をシリーズでお送りしましょう。まずその第1弾は龍源院にあるわき水、龍源水です。 |
龍源院 |
室町時代の中頃、応仁の乱が始まる数年前の寛正(かんしょう)二年(1461年)、桜田伝説の渋谷高間(しぶやたかま)が妻と娘達の死を知ったあと僧となり、自分の家を寺にしたのが寺の始まりといわれています。(まめこぞうの旅、桜田伝説参照) もとは護王姫神社(まめこぞうの旅、護王姫神社参照)の近くにあったようですが、戦国時代に今の場所に移されたとしてもすでに400年以上がたっています。 |
崖(がけ)とわき水 |
座間市は平らな部分と崖の部分からなる何段もの階段状の地形をしています。これを「河岸段丘」(かがんだんきゅう)と呼びます。ここに数万年前まで相模川の河原だったあとを示すレキ層があります。座間市のわき水の多くはこのようなレキ層にしみこんだ水が、崖の部分でわき出してくるものです。 くわしくはまたいずれ・・・ |
龍源水 |
龍源院本堂の右手裏から清らかな水が豊富にわき出しています。これを「龍源水」(りゅうげんすい)と呼びます。参道の一番奥からわく水は、水面にさざ波を立てるほどの勢いがあります。 池のように水が広がった部分は昼でも薄暗く、まるで別世界・・・ここにいるとお寺ができた戦国時代にもどったような不思議な感覚にとらわれます。 |
さらに墓地の横をとうとうと流れて寺の外へ出た水は、平成のはじめまで生活用水として野菜や食器を洗うのに使われていました。まめこぞうは昭和の終わり頃、タワシとお茶碗が置いてあったのを見たことがあります。 |
ホタルの公園 |
龍源院のすぐ前は「ホタルの公園」と呼ばれ、この水の流れを中心に周辺が町ごと整備されました。四季折々の花が咲き、水の流れる音と虫の声だけが聞こえるのどかな雰囲気の中でベンチに腰掛けていると、悪いストレスなんか消えてしまいます。 |
水の中には小魚の他にカワニナやシジミ、ニホンザリガニ、サワガニ、そしてホタルの幼虫などがいます。どれも都市化が進んだ町では貴重な生き物ですが、特に夏になると光るホタルが見られます。といっても完全に自然のホタルというわけではありません。地元の人々がホタルとその餌になるカワニナを努力して育てていらっしゃるのです。 ニホンザリガニって、アメリカザリガニとは違って泥と同じ色をしていて少し小型のザリガニですが、今では珍しい生き物なんですよ。 |
左はシジミ(死んでいますが)、右はカワニナ、上はサワガニです。 |
弁財天(べんざいてん) |
水のわき出す所の横にはちょっと変わった石像がまつってあります。それはとぐろをまいた大きな蛇の上に人の首が乗っているというものです。これを龍源院では「弁財天」と呼んでいますが、 この石仏、もともとはここにあったほらあなの奥に安置されていましたが、穴がくずれてしまったために外に出され、その後お堂が造られて今のようになりました。ちなみに崖はちょっと前まではレキがむき出しだったのですが、今は竹や木が生えて森のようになっています。 |
弁財天か宇賀神(うがじん)か |
弁財天というのは水神様で、普通、琵琶(びわ)を持った女性として描かれることが多いようです。七福神のメンバーの一人ですね。でもここにある弁財天は蛇と首・・似ても似つかないものですが、本当は宇賀神と呼ばれる神様なのです。 宇賀神とは日本古来の神様で、本来は稲そのものをご神体とし、やがて水のわく所を守る水神様としてまつられるようになりました。宇賀神の姿はとぐろを巻いた蛇の体に人の頭を乗せたものが多いのですが、人は女性である場合も男性の老人である場合もあります。蛇と首は別々のものではありません。宇賀神とはこのような姿をしているのです。 |
龍源院にある石像についてある解説には「女性の首が乗っている」と書かれていますが、それは間違いです。おそらく髪型を見て女性と思われたのでしょうが、これは男の神様です。よーく見て下さい。男でしょ? ほら、ひげがはえてる。 仏教が伝来して国内に広まっていったとき、もともと日本にあった神様と新しく入ってきた仏様はあまり区別されることなくごっちゃになってしまいました。これを神仏習合(しんぶつしゅうごう)と言います。同じ水をまつった神様と仏様は同じように扱われ、そのうち名前も姿もごちゃ混ぜになったのです。ですからある場所では宇賀神の像を弁財天と呼び、またある場所では弁財天の像を宇賀神と呼んでいても、「それは間違っている!」とは言い切れないのです。その土地の人が長い間「弁財天」と呼んでいるなら、それは弁財天でいいのです。 と言いながら、まめこぞうはやっぱり龍源院の像を宇賀神と呼びたいのですけれど・・・ |
不動明王(ふどうみょうおう) |
龍源水の池がせばまった所に橋がかかり、その横に不動明王の石像がたっています。 背中に炎を燃え上がらせたこの仏様がなぜ水の中に?もともと水を守る仏様というわけではなかったのですが、滝のような所で修行(しゅぎょう)をしていた修験者(しゅげんじゃ)がその場に不動像をまつっていたことから水との関わりが強まって、いつのまにか水神と同じように水のわく所にまつられるようになったと思われます。市内には不動明王の石像や木像がいくつもありますが、わき水に関係あるものとしては他に心岩寺(しんがんじ)の池にもあります。 |
おまけ |
まめこぞう