第37話 なべっつるし
2007年10月30日 00:00
第37話 なべっつるし |
栗原中学校から芹沢へ下るゆるやかな坂道の途中に十字路があります。そこには昔、恐ろしい「なべっつるし」というおばあさんがいたという話があります。 なお、このページの最後に重要な話が載っていますのでそこまで読んで下さいね。 |
なべっつるしの伝説 |
そのおばあさんは四つ辻付近の山の中に住み、よれよれの服にぼさぼさの白い髪をたらし、鍋を藤づるで木からつるして獲物を待ちます・・ 夕方薄暗くなった頃、たまたま子どもが坂を通りかかったらつかまえ、あっという間につるしてあった大きな鍋に入れてグツグツ煮て食べてしまうのだそうです。鍋をつるしているからなべっつるしと呼ばれ、芹沢あたりの子どもにとっては最大の恐怖だったようです。 ただ、いつの頃のことかというとはっきりはしませんが、昭和の十年代までは語り継がれていたとか・・ |
なべっつるしの場所 |
栗原中学校の東端から芹沢の集落へくだってくる現在の道路は、自動車のために最近つくられたもので、昔の坂道は写真左上の石垣に沿っていました。そこには今でも人一人がやっと通れる細い道がありますが、ここが道であることはもはや地元の人でもほとんど知りません。 宅地化が進んで木も切られましたが、ちょっと前までは新しい道を自動車で通っても薄暗い感じがしました。こんなところに鍋をつるした老婆が隠れている・・と言われたら確かにいそうにも見えました。 |
なべっつるしは実在したか? |
そんなおばあさんがいたら恐いですね。ひょっとして過去に本当にそんな猟奇的殺人事件があったのでしょうか・・。 いやいや、おそらくは夕方遅くまで遊んでなかなか帰ってこない子どものことを心配した親が、いましめのために作った話ではないかと思うのですが、どうでしょう? だいいち鍋を木につるし、必要なときにおろすなんて実際にはとっても面倒ですよね? |
今や有名ななべっつるし |
なべっつるしは芹沢の一部に言い伝えられていた話で、地元でも知っていた人は多くなかったといいます。場所があまりにも具体的ですが、これはお話を「作った」ご家庭の子どもの通り道だったからでしょう。 それが世間に知られるようになったのは2段階あります。 まず最初は「座間むかしむかし 第八集」(昭和59年 座間市教育委員会発行)に掲載されたことです。まめこぞうもこれで知りました。 さらに「座間のむかし話絵本Ⅲ『なべっつるし』」(平成10年 座間市教育委員会発行)が発行され、市立図書館だけでなく、市内すべての小中学校に配布されたことでもっと広く知られるようになりました。 この絵本はとても見やすく、多くの子供達に読まれてきました。今これを読んでいる座間市民の方の多くも一度はこの絵本を目にされたことがあるのではありませんか? |
この絵本、実はすごいのです! インターネットで「なべっつるし」を検索すると多くのサイトがヒットします。その中のいくつかは日本中の昔話絵本を紹介する物で、なんと、「なべっつるし」が超大物の「ももたろう」や「ヤマタノオロチ」と同列に扱われているのです。 あらら、なべっつるし、いつのまにか全国区です。そんなに有名になりつつあることを座間市民が知らないでしょう? |
話はかわって 「一反木綿」 |
漢字で書くと??と思われるでしょうが、「いったんもめん」と言えば知らない人はいないでしょう。鬼太郎の仲間で、白くてひらひらと空を飛ぶ妖怪です。他に「子泣き爺ぃ」「砂かけ婆ぁ」「塗り壁」といったレギュラーメンバーが有名ですが一反木綿は水木氏の創作ではありません。九州、鹿児島の小さな村に言い伝えられていた話なのだそうです。 一反木綿はいたずらが好きで、子どもが夕方遅くに道を歩いていたりすると空から舞い降りておどかすのだそうです。本来の一反木綿はただそれだけのことしかしないのです。それがだんだん「首に巻き付いて絞め殺す」とか「カッターのように相手を切る」といった凶悪な能力が付け足されていったようです。 ふと考えるとこれも帰りの遅い子どもを心配した親が作った話なのかもしれませんね。 |
さらに 「しまっちゃうおじさん」 |
マンガ「ぼのぼの」の中で主人公の「ぼのぼの」が不安になると勝手に想像してしまうキャラです。「さぁ、しまっちゃおうね」と優しく言いながら子どもを抱き上げ、石の小部屋にしまっちゃうのです。ぼのぼのはこれを異常なまでに怖がります。 うちの娘もこのアニメを見てなぜかとても怖がるもんですから、悪いことをしそうなときとか暗くなるまで帰りたがらないときなんぞに「しまっちゃうおじさんに、しまわれちゃうんだ」と言うと、びぇーびぇー泣きながら抱きついてきました。かわいいもんだ。 |
小中学生諸君! |
学校から下校するときはさっさか歩いてまずおうちに帰りましょう。道ばたで暗くなるまで話しているのも楽しいひとときですが、あなたが考えている以上に夕暮れ時以後は危険がいっぱいなのです。 いったん帰宅してから遊びや学習塾に行ったときも同じですよ。 現代のなべっつるしは自動車に乗ってやってくることが多いです。道を聞くふりなどしてうまいこと車内に入れ、あっという間にどこかに連れ去ります。歩いてやってくる場合もあります。むしろこちらの方がいざというとき逃げにくくてやっかいです。 これを読みながらあなたは「そんなの自分は大丈夫」と思ってるでしょう? 新聞やテレビに出ないから何もなかったと思ったら大間違い! 実は・・・まめこぞうの知り合いに、何人も恐い目にあった人がいます。これは伝説や作り話ではありません。お父さんやお母さん、学校の先生や地域の方々が子供達の安全について真剣に考え、さまざまな取り組みをしていることを知っていますか? PTAや自治会などでも皆さんを守るためにしょっちゅうパトロールをしています。しかしすべての子どもに対して常にくっついて見ているわけにはいきません。本当にあなたを守れるのは、あなたしかいないのです。 何よりも帰りが遅かったとき、お父さんやお母さんにしかられたことがあるでしょう?その時は「うるさいなぁ」と思ったでしょうが、危険はそこいら中にあるのです。 それでもおとなから「心配だよ」と言われれば「心配してくれなんて頼んだ覚えはない!」などと反論したくなっちゃうのが反抗期。 あと何年かしてあなたが親になったとき、きっとその心配が本当にわかりますよ。そしてあなたも自分の子どもに言われるかもしれません・・「まじ、うぜぇ! あんたに関係ないでしょ!」 ちなみにまめこぞう自身は自分の親にそんなこと言ったこともないし、自分の子どもにも言われたことがありません。 |
まめこぞう